来日期間に学んだこと 2013 (Formado Mexicano)
2013年、カポエィラ・テンポの国際交流イベントは11回目を数えました。
さて、今年もプライベートでMexicano(メシカーノ)が来日しました。
前回来日した時は私がグループにいなかったので、Mexicanoと日本で会うのは初めてです。
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※計3回の中央区・千代田区クラスを担当してもらいました。
彼との思い出で一番印象に残っているのは、2005年にブラジルに行った時(彼は黄色帯でした)
Rio VermelhoでArroxaというおじさん的なダンスを踊って、カイピリーニャを呑んで…という時に、彼はこう言いました。
「日本のサイトをいつも楽しみに観ていて、とっても誇らしく思ってるんだ。
世界の裏側で、自分たちの文化がこんなにも愛されて、発展していってるんだって。
リュータの仕事はすごいね。ホントにありがとう」
ブラジルの人から、ブラジル文化を日本で広めていることについてお礼を言われたので
印象に残っているのは、彼ともう一人いますが、日本で活動している中でブラジルの人から
「日本人になにがわかるの?」と言われた経験もあったので、このように寛大にとらえて
くれるブラジル人に感銘を受けたものでした。
さて、今年はMexicanoに音楽クラスを2回協力してもらいました。
彼はバンドのヴォーカルをやっていたこともあり、歌がとてもエネルギッシュで上手です。
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二回のクラスの中で取り上げたことは5つ。
1, 聴くこと
2, 歌の果たすメタファー(暗喩)の役割
3, 音楽の拍子(compasso)
4, ホーダの中での自分の役割を見つけること
5, ひとつのことを大切にすること
写真でもジェスチャーしていますが、まずは「聴くこと」が大事です。
「神様は人間に、口はひとつ、耳はふたつくれたんだ。だから良く聴かないといけない。
自分が何をするかよりも、まずは何が起こっているかをよく聴くこと」
そして、ここからはカポエィラの歴史と大きく関わる内容ですが、
歌が果たしているメタファーについてです。
この日は「A onça morreu mato é meu…(黒ヒョウが死んでしまった。森は俺のもの…)」の歌を取り上げて解説してくれました。
カポエイラが継承されていく過程を考える時、「直接何かについて述べる/直接的な表現」ことは
多くの場合制限されていました。支配者に簡単に理解されてはいけないからです。
ですから、カポエイラの歌には私達外国人にとっては、謎の言い回しや言葉が出てきます。
それもそのはずです。
簡単にわかられては困るわけですし、異人の支配者(ポルトガル人)にわからぬように
隠していた表現ですから、日本人の私達にとってはより遠いはずです。
ホーダが行われている状況を想像してみましょう。
その中で息も絶え絶えに、もう体力の限界でジョーゴしている仲間のカポエイリスタがいます。
または、彼/彼女が倒し技をもらって倒れたとします。
ビリンバウを弾いている人(同じグループの人)は、彼と誰かが交代しないとまずいなと思います。
こういう時にこの歌は歌われます。
A Onça = 黒ヒョウはやられてしまった/もう死んでしまいそうな仲間のカポエイリスタ
mato = 森 は 自分たちのホーダを指します。
この森はmeu=自分のもの・自分たちのテリトリーだから、守らないといけないし、
自分たちのものであらねばいけない。
だからこの黒ヒョウを助けてやれ(誰かあいつの代わりにホーダに入って戦え)
…ということを示す意味の歌なのだそうです。
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※みんな彼の人柄と音楽が大好きです。すぐに人が集まって輪を作り音楽を奏でます。
この他にも、カポエイラの歌にあるメタファー(metafora暗喩)についていくつか解説してくれました。
授業の最初にみんなはどんなことをこのクラスで知りたいの?と聞いた中で、最も多かったのが
「歌の入りを外してしまう」というものでした。次に「リズムがどんどん速くなってしまう」。
メシカーノの答えはこうでした。
「音楽はたとえどんなものでも、必ずコンパッソCompasso(拍子)がある。
カポエイラの音楽でも、ポピュラーソングでも、ジャズでもなんでも。
だから、まずはその音楽が持っているコンパッソを捉えることが肝心。
このテンポの3番目のアルバムを録音した時も、各楽器それぞれを録ったんだけど、
ヘッドフォンにはtu–tu–tu–tu–っていう、一定のコンパッソ(拍子)が入っているんだ。
そのコンパッソをいつも意識して、尊重して演奏をするようにしたら間違えないよ」
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さて、残りは私にとってとても印象的な話でしたが、彼がいうには、
「音楽は歌わされるものであって、歌うものじゃない」
「ホーダの中で自分の役割を見つけること」と「ひとつのことを大事にすること」と
共通の話になってきますが、メシカーノは繰り返し、ひとつでいいから、その歌を
繰り返し練習して、その歌を聴くと誰かを連想するというイメージができるくらい
大切にすることが大事だと言っていました。
Dendê ô dendê の歌は誰を連想する?と言われると、それはリリウです。
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Luanda é はもちろんメシカーノです。
昔アニーが、Papacapimの歌を聴くとさやかを思い出すわと言っていたのを思い出します。
1階のアカデミア(道場)で、私はこの歌を一人で何度も練習していて、
2階の家でミシンを踏んでいたアニーは、すっかりこの歌が私の声で耳に染みついたといっていました。
原曲はACARBOですが、ホーダでも何度も何度も歌いました。
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「そういう、この歌は自分の歌だ! っていう一曲を自分の中に持っておくこと。
そしてそのひとつの歌を大事にして、何度も練習しておくんだ。
そうすると、その歌を歌う状況がホーダの中で起きた時、歌に自分が歌わされるから」
と言っていました。
「あの歌を次歌おうとか、そういうことを考えることは邪魔になるし、緊張するだけだから、
いつも自分の中にちゃんと磨いてある曲を持っておくんだ。
そうすれば、よくホーダを聴いていれば、そこで何を歌うかは自分が選ぶんじゃなくて、
自然に引き出される。」
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※みんなに「もっと歌って!」と促しています。
この話はとても印象的でした。
私も、歌というのは自分が選んで歌うものではなく、歌い手や弾き手を媒介として、
ある時代の人々の声を代わりにしているものだと思っていたところだったからです。
ひとつのことを大事にする、ということでは、メシカーノはもうひとつ基本的なことを教えてくれました。
ホーダの中で、自分の役割をひとつもって、それを大事に育てることです。
ことわざ” O pato nada, voa e anda, mas não faz nada direito.”
(アヒルは泳ぐし歩くし飛ぶこともできると得意になっているけど、どれもちゃんとできるものはない)
を紹介していました。つまり、どれもアヒルちゃん程度にできるよりは、
ひとつできるものがある方がいいということを言っていました。
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「自分は音楽がすごく好きで、自分の存在が音楽によって発揮されると思う。
ジョーゴももちろん好きだし、カポエイラのすべてが好きだ。
でも、アクロバットはそこまで得意じゃない。
ホーダの中にはアクロバットが凄く得意な人もいるだろうし、音楽は苦手だという人がいて当然。
大事なのは、ホーダの中で自分が自分らしくあるひとつのことを大事に育てるということ。
今みんなは、小学校に入学したからね、苦手な体育(アクロバット)も、歴史も、
英語(ポルトガル語)も、音楽もみんなやらないといけない。
でも、中学高校に進む時には、自分が何が好きか、どんな道に進みたいかわかってくる。
大学に進む時には、自分が学びたいものを自分で選ぶよね。
そしてその学びをもって社会に出ていく。
今みんなは小学校にいるけど、時間と共に、自分の好きなものを選んで、磨いていくことが大事だよ」
難しいことは何一つしませんでしたが、とても学びの多いクラスでした。
練習の後は、みんなと楽しい東京観光です。
せっかくプライベートで日本へきているので、練習場所でもある銀座ストリートをご案内。
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※松屋銀座前
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※Relógio de São Pedro
東京案内の達人が選んでくれたお店はこちら「ぶんか横丁」
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※「牛」へ向かいます
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※かんぱーい cerveja gelada…
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※私はもやしが大好きですが。彼はpé de feijão食べるなんて信じられない…
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※ついでなんと牛の舌(タン)が出てきて Meu Deus…
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※神田の時は、ブラジルフェスティバルで使えるように流行語「じぇじぇじぇ」をSapecaに習いました。
そして彼を送り迎えする間でもいろんなことを学びました。
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バイーアでは良く見る光景です。階段で重い荷物を運ぶ女性を手伝ってあげていました。
2013年は長く一緒に過ごしている奥さんといよいよ結婚式を挙げて、本当に素敵な夫婦、家族です。
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普段は太陽エネルギーをプールや家庭に配給する会社の代表取締役をしています。
良い学びを本当にありがとう!!