Quadra: Menino quem foi seu mestre? (カポエィラの音楽)

5月はふたつの音楽の特別クラスを企画し、第1回ではカポエィラ・ヘジォナウの創始者である
Mestre Bimba(メストレ・ビンバ)のQuadra(クアドラ)を取り上げました。

Quadra(クアドラ)はカポエィラのホーダを始める時の開始の儀の歌のようなもので、その場に
いる一番その時にふさわしい人が、その場に適した歌を歌います。
カポエィラ・アンゴラでいうところの、Ladainha(ラダイーニャ)の、カポエィラ・ヘジォナウ版を
Quadra(クアドラ)といいます。
カポエィラ・ヘジォナウではビリンバウ1本、パンデイロ2枚で、この時はみんな手拍子を打たず、
そこで歌われていることに耳を傾け、その場を共有します。


※かずさん(右)がクアドラを歌っています。私もかずさんもちょっと顔が神妙で怖いですね…
今回は、そもそもクアドラとは何なのだろう、クアドラを歌うということはどういうことだろう、
ということをみんなで考察し、メストレ・ビンバのクアドラ「Capnega ontem teve aqui…」
「Menino quem foi seu mestre…」について紐解いてみる、ということを試みました。

私はカポエィラ・ヘジォナウだけをずっと練習してきましたが、このクアドラで歌われ
ている単語の意味は調べても、内容についてよく考えたことがなく、私の先生の
奥さんのアニーが話の中で例えに使ったことからようやく興味が理解できました。
短い歌詞の裏に潜められた意味は様々に解釈できますし、実にいろんな解釈や
使い方をしている人がいます。
日本だと、古典の和歌や短歌に託された意味をくみとるようなものでしょうか。

Iê quem foi seu mestre?  
Menino quem foi seu mestre?  
Mestre foi Salomão    
Discíplo que aprendo 
Mestre que dou lição 
O mestre que me ensinou 
Engenho da Conceição 
Só devo e o dinheiro 
Saúde e obrigação 
Segredo de São Cosme 
mas quem sabe é São Damião 
camará….

この歌では師弟の関係について歌っています。
調べていく中で、カポエィラという伝統が継承されていったのは紛れもなく、人と人との
繋がりの中であり、時間を共有した人たちの間のことで起こったことなのだなと思います。
歌い継ぐことで深まり伝わって行くものなので、やはり歌がカポエィラの中で果たす役割
というのはとても大きいのです。

カポエィラの音楽はBGMではないので、踊るためにただ流れているものではありません。

クアドラで歌われていることは、外国人の私達からすると、まるで記号の連続です。
歌われているキャラクターに、伝えたいメッセージを託したり、隠していたりするので、
その単語を辞書でなぞっても、そこに託された意味まで汲み取るのは至難の業です。

「サォン・コズミの秘密を知っているのはサォン・ダミアォンだけだ」

さて、コズミとダミアォンにはいったいどんな意味が託されているのでしょう?

コズミとダミアォンはふたごのこどもの聖人で、カンドンブレーではイベジーという神様です。
ふたりは物を言わずともお互いのことが手に取るようにわかります。
イベジーの信仰では、どちらかがこの世の命を終えてもなお、お互いの魂は共に
あると考えられます。
コズミとダミアォンがどうやらふたごらしいということは、一般的な知識からも
得ることはできます。Mariene de Castroもショウで歌っていますね。

私達は自分の師と呼べる人と、コズミとダミアォン(ふたご)のような関係です。
自分の先生の教えは自分の身体の中にいつまでも息づき、先生の考えることは、
私達生徒は言葉を介さずとも理解することができます。
先生が亡くなってもなお、先生の一挙一動、言動は自分の身体に刻み込まれ、
記憶されて生き続けていくでしょう。
そして「秘密」はいったいなんでしょう?
あるとき、先生から大切なカポエィラの秘密・秘伝が伝えられたのかもしれません。
カポエィラの教えはこのように師弟間が非常に近い距離で受け継がれていきました。

カポエィラのエッセンスは、教科書に「これこれなになに」と書かれているものでは
ありません。非常に抽象的で、感覚的なものが含まれており、何よりも私達に
可視できない世界で起こっていることもたくさんあります。
Axé(アシェー)という言葉はエネルギーのようなものですが、カポエィラの中では
このように目に見えないものを取り扱っていることが核の部分では多いですね。

つまり、自分の先生の体温や、呼吸、におい、立ち居振る舞いまでをも肌で
感じながら、教えを身に着けていったのです。
教えられた歌を歌う度、いつも自分の先生を自分の中に感じることができます。
そしてこのクアドラを歌うたび、教えの継承の重要さ、この文化が生まれ育まれた
歴史と環境を思います。

師の教えてくれた「秘密」。日本語では「秘伝」でしょうか。
それは、私達の中に大切に、ひけらかすことなく謙虚に生き続けていきます。

10年以上かかって、いろんなメストレのお話しや自分の体験、ようやく読める
ようになってきたポルトガル語の本などが合わさって、謎だったクアドラも、
紐解くことができるようになってきました。

これらの得た知識、自分が教えてもらったことは、大切に伝えて行きたいな
という思いをもって、これからもカポエィラに恩返しができたらという
気持ちでクラスに臨んでいます。

参加してくださったみなさなありがとうございました。

最後に、偶然その日の晩、サルヴァドールのカーニバル前の人々の生活を
描いた「オパイオー」という映画をみんなで観ていたら、なんとその主人公の
兄弟は「コズミ」と「ダミアォン」でした。
ブラジルではこども、兄弟を一般的に想起させる名前なのでしょうね。

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