映画「父を探して O menino e o mundo」

イメージフォーラムで上映中のブラジルのアニメーション映画「O menino e o mundo / 父を探して」を観てきました。
この作品は、第88回アカデミー賞長編アニメーション部門で、スタジオジブリ「思い出のマーニー」、ピクサー「インサイド・ヘッド」と並びノミネートされました。惜しくも賞は逃しましたが、ブラジルひいきの目を抜きにしても、(いや、それは抜けないか…)「インサイド・ヘッド」よりずっとよくできているように感じました。

特徴はやはり、多くのブラジル文化にも通ずる、「体験したかのような」音と、人間らしさを感じさせる曲線やタッチ(なんと、この作品全編手書きです!)そして感覚を呼び覚ます色彩のコラボレーションです。単純に効果音や音楽だけでなく「人の声」に至るまで、音の体感が非常に人間的で、ノンバーバルな作品であることでむしろとても楽しめます。

どんな風に創っているかというと、こんな風に(01;30)

物語は、田舎の村に暮らす家族の父が、仕事を求めて都会へ出てしまったことから、寂しさのあまり父を探す旅に出た少年が出会う、世界の姿を綴っています。

この「少年(メニーノ/ミニーノ)」のフォルムがかわいくて、彼を観にいったようなものですが(そしてナナ・ヴァスコンセロスとエミシーダが参加していると聞いて!)、この「三本の毛がマルの上にふわふわ」みたいなものに親近感が湧いてしまうのは、何か日本になじみのキャラがいたかな?と必死に考えましたが、「オバQ」くらいしか浮かびませんでした。コロ助もフォルム似てる?
このメニーノ(少年)が笑ったり息切れしたりするたびに、かわいいな、と思ってしまいます。

音楽では、一部を故ナナ・ヴァスコンセロスが担当しています。
ワイルドなその音の生み出し方が、音を通じた様々なコミュニケーションができた人だったのではと思わせます。

予告編はこちらから(01;30)
https://www.youtube.com/embed/3LPtWPxj3G8

なんのへんてつもない普通の、「人びと」。そして日常を折り重ねた「世界」。
過酷な農村の労働、田舎から都会に出てきた人たちの行くすえ、ブラジルという国、軍事政権、そして未来に引き継がれていくもの…
一緒に観に行った友達は「暗い!」とつらそうに行っていましたが、確かに最終的には暗いのです。
スラムの貧困や暴力を描いているわけではないのだけれど、何ができるわけでもないこの途方もない世界を少年の目が見て行って、見ているだけで精いっぱいの世界の暴走を知り、そして誰にも知られることがない「多くのわたしたち」普通の人たちの一生を過ごしていくのを観るのはつらいものです。
でもそこに何かができると、世界を変えることができるとクレヨンをとって、音を重ね、色彩を重ねていったのがこの作品だと思います。

「父を探して」の東京・渋谷イメージフォーラムでの上映は5/20まで。
レイトショー21:15から(予告あり)ですので、お仕事帰りにご覧になってはいかがでしょう。
オススメです◎

「父を探して」 
WEB  http://newdeer.net/sagashite/
監督 Alê Abreu
音楽 Nana Vasconcelos、Emicida ほか
会場 イメージフォーラム(渋谷区 渋谷2−10−2 渋谷駅より徒歩8分)
上映 5/20まで毎日、21:15より
料金 1800円

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