2014年のカポエイラ・ブラジル文化活動レポート

2014年7月に、ブラジル大使館が開催した「サッカーパビリオン」の企画の
最終プログラム、東京外国語大学とブラジル大使館共催シンポジウム
「ブラジルのリズム」でカポエイラについての短い発表をさせて頂きました。
武田千香教授の研究 “ブラジルの文化における喜劇性-ユーモア・笑い・遊戯性-”
の成果発表で、今までに大学で講義した内容をまとめてご紹介しました。

シンポジウムは武田先生の研究室の大学院のみなさんの研究発表と、
私とContra Mestre Koiidaによる第二部の二部構成になっています。

第一部「多様なリズム」
・ドリヴァル・カイミ-バイーア文化の象徴   
-花田勝暁(東京外国語大学博士課程後期課程)
・ジルベルト・ジルとトロピカリズモ 
-江口佳子(東京外国語大学TUFS アカデミー講師)
・フレヴォ-レシフェにおけるカーニバルのリズム 
-宮入亮(東京外国語大学博士課程後期課程)
・ファド-力強い魂の倦怠 
-渡辺一史(東京学芸大学非常勤講師)

第二部「カポエイラの世界」
・カポエイラの変容と歴史 
-脇さやか(Grupo de Capoeira Regional Tempo)
・カポエイラで立ち上がる非日常 
-小飯田吉史(Grupo de Capoeira Angola Pelourinho GCAP)
・カポエイラ実演(Grupo de Capoeira Angola Pelourinho GCAP)

過去に東京外国語大学で講義させて頂いた内容はこちらから

東京外国語大学 ポルトガル語学科での講義 

東京外国語大学 博士課程 講義 
パート1パート2パート3

今回とても嬉しかったことは日本でカポエイラ・アンゴラの普及に務めている
Grupo de Capoeira Angola Pelourinho GCAPの皆さんと、
そして同じ大学(日本大学芸術学部)で同期生のコイイダくんと一緒に発表の
機会を持たせて頂いたことです。

過去に東京外国語大学で講義させて頂いた内容はこちらから

東京外国語大学 ポルトガル語学科での講義 

東京外国語大学 博士課程 講義 
パート1パート2パート3

私が客観的な視点でカポエイラの歴史について述べ、
カポエイラを肌で感じ、呼吸し、身体で吸収してきたコイイダ君がその
カポエイラージェンを語り、実演を観るという、我ながらマニアックな機会です。

コイイダくんについて語ると非常に暑苦しくなるのですが(私が)
4年ぶりにブラジルで再会した時に、大きな衝撃を受けた人がコイイダくんでした。

大分前から知っていたはずの人なのですが、ブラジルで2度滞在が被っていて、
かつては西新宿在住のご近所だったうえ、いくつかイベントも出て頂き、
同じ釜のうどんやムケカを食べた仲のはずが、いままでいったいコイイダくんの
何を見てきたのだろう、ただの超銀河系の人だと思っていたのか?というほど、
こんなにも“カポエイラ”を体現できる人が日本人でいたんだと改めて驚き、
カポエィラの本質を常に探究している姿に感銘を受けました。

カポエイラがそのフォルムを、境界を、なくしていって、
ジンガしている瞬間に自分が何者でもないものになる時があるのだということ、
カポエイラを通して非日常に、第三の世界に触れることが可能なこと
(さあ、なんだか危険なハナシになってきました…) 
それを初めて感じさせてくれたのがコイイダくんのカポエイラでした。

これは決してそこらにあるような話では(日本では)ありません。
バイーアの文化というのは、感じて育つものですから、まずはそれを
「感じる」感覚が備わっていることと、それを「学び、自分の身体に落とし込む」
姿勢と、今度はそれを「磨き、体現し、伝えていく」能力が必要なわけです。
そうだれそれとできるものではありません。

私は長らく「Mandingaマンジンガ」の存在は知っていても、なんだかおまじないのような、
魔法使いのような、そういう漠然としたもので、カポエイラをしていながら
あまり自分とは関係のない「あちら側」のことのように思っていました。
ですが、コイイダくんとの再会は「あちら側」と「こちら側」の境界を大きく壊して繋いでくれました。

マンジンガについて書く時かならず引用するPedro Rodolpho Jungers Abibの
文章があります。

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マンジンガを知るには、アンゴレイロの、ある種の人々が行う、ある種の行為を、
より深く理解する必要があります。
その行為とは、最初はカポエイラのホーダの中で習得されるものですが、
メストレ・モラエスが言うように、やがて日常生活に入り込んで行き、
世の中とその接し方にも表れてきます。
特に、サルヴァドールとその付近一帯、ヘコンカヴォに至るまでの地域に住む
アンゴレイロたちには、世間からみると、かなり風変りなある種の行為、信仰、
迷信、習慣などが見られます。
これはまさしく、カポエイラ・アンゴラの生活をとおして習得したもので、現代社会の、
いわゆる「ふつうの理屈」とは違う理論に基づく行動なのです。
そういう人々は大抵、特別の注意力や霊感、第6感などが発達していて、
これに従って行動すると、ふつうの都市社会の行動基準から、かなり外れるのです。
この「ふつうと違う論理」は、アフリカ系ブラジル文化に由来する密教の特質と関連があり、
大昔からカポエイラの様々なフォームによって表現されています。

昔のカポエイリスタたちは、カポエイラの根本には魔術があると言います。
カポエイラでの「マンジンガ」(mandinga魔術)という言葉は、攻撃すると見せかけて
相手をかく乱するフェイントのような、抜け目ない策略を意味すると同時に、
カポエイリスタと、アフリカ系ブラジル宗教との間にあるきずなを表すという、
神聖な意味もあるのです。

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かように、いろんなフレームをはずしていき、あちら側とこちら側のきずなを繋ぐ、
時に時間も空間も越えていく、そんなカポエイラを日本もじんわりと浸透させて
いる人たちが日本にもいるんだと、日本のカポエイラはもう20年になろうという
ところで、すごい質に行きついているんだなと感じました。

コイイダ語録は山とあるのですが、コイイダくんがその身体でカポエイラの多くを、
その細部にわたるまで表現していることに感嘆して、自分には理解ができても、
それができない、ということをうじうじと言っていた時、
「言葉も身体からでるものだからね」と言ってくれたことが常に頭にあります。
もちろん身体の反応や表現もそうなのですが、言葉からこぼれ出るものも、
人は隠すことができません。言葉も同じようににじみ出てくるものだからです。

カポエイラは身体を通じて世界を見る方法だといいます。私は身体に対する
執着、身体でできる表現への執着がとても大きくなってしまうのですが、
そうか、言葉も身体から出るものなんだと、はっとさせられました。

文章を書くときはいつも、この言葉に励まされながら一字一字タイプしています。
自分に素直に、できることを書き連ねていくと、自然と自分自身が現れ出てくるのだから
何も飾る必要もないし、恐れる必要もないのだと。

そんなコイイダくん、そしてGCAPのみなさんとご一緒する機会が多かった2014年は
春の六本木アートナイトに始まり、オモハラヨガクラブでのワークショップも、非常に
実りある素晴らしいものでした。本当にありがとうございました。

※オモハラヨガクラブでのワークショップ
※六本木アートナイト。西尾美也さんのアフリカの布のパッチワークでできた「スカート」の下に、ビリンバウが響きます
※観ている人が皆笑顔なのがとても印象的でした

2015年も早速ひとつ企画がありますので、みなさん是非楽しみにしていてください。

そして、もうひとつ、私にとって嬉しい出来事がひとつありました。
日本大学芸術学部で一緒に学んだ、現宝塚歌劇団の演出家である稲葉太地君の作品
「パッショネイト宝塚!」での、カポエイラのシーン「ファヴェーラ」で、尊敬するカポエイリスタ、
カポエイラ・バトゥーキの陽子さんが振付をし、宝塚史上に残るような素晴らしいシーンが
生まれました。

大学ではことあるごとカポエイラの布教活動に努めていたのですが、
(学食の扉をあけたら、ピロティ―で逆立ちしていたコイイダくんに出会ったのも日芸でした)
卒業して15年が経ち、宝塚100周年という記念すべき年に、一通のメールが届きました。
宝塚でブラジルを始めたとしたラテンショーを製作することになり、ついてはカポエイラの
シーンを創ろうと思うという嬉しい稲葉君からの便りに、宝塚の魅力と、カポエイラの魅力を
融合できる振付家といえば陽子さんしかいない!と迷わずご紹介しました。

三人で食事をしながら話すブラジル・カポエイラ・サンバ、そして宝塚の話は、
陽子さんの真摯なカポエイラに向かう思いが一杯で、また、稲葉君の、伝統ある
宝塚に挑戦のワンシーンをという、宝塚への愛あればこその思いが伝わり、
忘れられない夜になりました。

星組のトップスター、柚希礼音さんの魅力も最大限に、稲葉君の作品の中で
陽子さんならではの音楽と振付「ファヴェーラ」のシーンは大成功をおさめ、
新聞評にも「カポエイラ」の文字が取り上げられているのを、本当に嬉しく拝見しました。
(まさか宝塚スターが、オグンの振りを踊り、アルマーダの蹴り合いをする時が来るとは!)

※おふたりのとりはからいのおかげで舞台稽古や本番も拝見しました。

大学の卒業論文で
「コミュニケーションの可能性としてのインプロヴィゼーション-規範と自由-」という
大それた論文を無理に書いたのですが、今読み返してみると、大学で学んだことは
実に今やっていることの様々な基礎となっているように思います。

今年、大学で非常に大きな影響を受けた熊谷保宏先生が亡くなられ、改めて
アウグスト・ボワール(「被抑圧者の演劇」のブラジルの演出家)や
パウロ・フレイレ(「被抑圧者の教育学」の著者)といった、先生が私に勧めて下さった
ブラジルの教育者・芸術家にも改めて興味がわきました。
これからはより、カポエイラを通じてこれらの学びを深めて行かれたらと思います。

2014年は肩の手術と、思えば結構大変な年でしたが、それ以上に得たものが
大きかった、実りある年でした。
ひとつは、いつもならば「いや…こういうことは誰々さんが一番ふさわしいから、
私ではなくこの方にお願いしてください」としていたことを、自分で挑戦してみたことでした。
このような貴重な機会を下さった方々に感謝申し上げます。
すべての実りは人との出会い、自分のことを信じて支えてくれる方々、そして
惜しみなく智慧と教えを授けてくれるに人達によってもたらされている恵みだと
いつも思います。
2015年も、今まで以上に調和を心掛けて、良い一年になるよう努力していきたいと
思います。

世界が平和で、すべての人がひとしく、幸せと優しさに満ちますように。

Boa virada do ano! 

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